2023年1月5日木曜日

立花隆氏の最大の遺産

 立花隆氏は、各方面にわたって活躍し、相当の業績を残してくれた正に「知の巨人」であった。『田中角栄研究』で知られているような、一国の総理を退陣に追いやったことなどは、彼が「知の巨人」と呼ばれるに相応しいことを示してくれているのではないだろうか。そんな彼が、日本国憲法の9条を絶賛し、「憲法九条は、日本の最大の資産だ」と語っていたことを知り、こうした日本国憲法の正当な評価こそ、彼が遺してくれた最大の遺産ではないか、そう思えてきた。なぜなら、憲法九条が防波堤になって、これまで戦争の惨禍から日本を守ってくれたことを説得力のある文章で示してくれているからである。
 もし九条がなかったら、日本はおそらく、朝鮮戦争のときから戦争に引きこまれていたでしょう。ベトナム戦争でも、カンボジア戦争でも、兵隊を出せというアメリカの要求を断りきれなかったでしょう。湾岸戦争でもアフガニスタン戦争でも、あるいはアフリカ各地の小紛争や、コソボなどにも兵を出すことが求められていたかもしれません。しかし、そのすべてを断ることができたのも(そもそも日本にそういうことを頼んでこないのも)、日本に憲法九条があったからです。日本に憲法九条があることは広く知られており、それが国際社会で特別の評価を受けているからです(最近の憲法調査会中央公聴会での猪口邦子前ジュネーブ軍縮会議大使の発言)。
 私は憲法九条は、日本の最大の資産だと思っています。これがあったが故に日本はいま歴史上未曾有の繁栄を楽しんでいるのです。第二の敗戦を経ても、日本はいまなお歴史上最高に繁栄しています。それは九条のおかげで、この国は、この六十年間、戦争なしで生きてくることができたからです。六十年間戦争なしでこられたのは、日本の歴史上はじめてのことです。もし九条がなかったら、この六十年の間に、何度もどこかの国と戦争をしていただろうし、それによって日本経済もアメリカ経済のように戦争経済化し、日本の産軍複合体が日本の権力中枢をにぎるという事態になっていたでしょう。そして、今日のような情勢では、日露戦争前の東大七博士みたいに威勢のいいのが出てきて、北朝鮮に兵を出すべしとか、北方四島に兵を出せ、尖閣列島に兵を出せ、竹島に兵を出せなどというのがきっと出ていたにちがいないと思います。
 憲法九条を持ったことの最大の効果は、アメリカあるいはその他の国からの戦争参加の誘いを断固として断ることができたということ以上に、それがわれわれ自身の手を縛る効果を発揮してきたということです。(『イラク戦争・日本の運命・小泉の運命』、立花隆著、講談社、2004年、p351〜352)
 今年は2023年だから、もう少しで80年も戦争なしで来れたことになる。このような優れた資産を、改憲という形でかなぐり捨てることはない。捨ててはダメだ。なんといっても、相棒(安保条約による)が悪い。立花隆氏によれば、片や、「戦争マシーン」だからだ。9条の優秀さは、アメリカの戦争マシーン化とセットで考えるとわかりやすいかもしれない。国際環境が悪化しているこの時期だからこそ、逆に、9条の真価を発揮するときなのである。
 イラク戦争でも、アメリカは湯水のごとく金を使い(戦闘開始から一ヵ月間に八百発飛ばしたトマホークミサイルだけでも、一発百万ドルですから、一日に二千六百六十万ドル)、すでに一年で一千六百五十億ドル使っているのに、それでも足りなくて、さらに七百五十億ドルの補正予算を組む計画を立てて戦争を継続しているという実態の中に、アメリカが国家として戦争マシーンになってしまっている状況がよくあらわれていると思います。(上同、p350)

 

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