歴史を逆行させてはならない
五味川純平と言えば映画化もされた小説『人間の條件』全6部であろう。そんな彼が選んだ詩、一田アキの『味噌汁』のことを知った。次のように紹介されていたのだ。 プロレタリア文学作品をよく読み、本を持ってもいた。ある時期、五味川さんが私の本棚からその手のものをひきぬいてゆく日が続いた。
そしてある日、人間的で感銘させる作品はこれ一つと一 冊の詩集のページを示した。それは一田アキの『味噌汁』であった。(『わが人生の案内人 』、澤地久枝著、文藝春秋、p36)
一田アキは中野重治の妹で、本名は中野鈴子である。それで、『中野鈴子全詩集』(フェニックス出版、1980年)に詩「味噌汁」があった。一部を紹介するが、自由がなかった時代の雰囲気というものが見事に表現されている。このような時代があったことを決して忘れてはいけない。そして、「歴史を逆行させるようなことがあってはいけないという思い」を新たにすることができた。慣れない賃仕事で腰が曲がってしまった
そしてひとりですする味噌汁はほんとに味ない
わたしはあなたの女房
わたしはあなたの女房なのに
逢いに行けばガラス戸がおりている
手紙を書けば消されてしまう
わたしは時々に泣く
わたしも下のおかみさんのように
あなたの茶わんに味噌汁がよそいたい(「味噌汁」より、その一部)
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