2022年4月9日土曜日

アジアはひとつ、地球はひとつ

 朝日新聞(202224日)に、「5臓ないなら、ないように生きる 建築家・安藤忠雄さん」というインタビュー記事が掲載されていた。「2009年と14年に2度がんが見つかり、胆嚢、胆管、十二指腸、膵臓、脾臓を全摘し」、『5臓なしの体』になって約8年」。「それでも私は、不思議と元気」だという。そんな彼に興味を持ち、『歩きながら考えよう 建築も、人生も』(安藤忠雄著、PHP研究所 2010年)を読んでみた。エネルギッシュな彼の人生そのものに魅力を感じたが、それだけでなく、「アジアはひとつ、地球はひとつ」とか、「これからアメリカは世界中の人たちと地球上で共に生きる、という表現をしませんかと提案」に滲み出ている思想性にも魅力を感じた。以下、下線を引いた「書き抜き」を紹介する。

 ひとつの建築を見たら、また次の建築まで二時間かけて歩きました。歩いている間は、前に見た建物のことを考え、そしてこれから見る建物のことを考え、頭の中でずっとそれを思い描きながら歩くわけですよ。p 36

 初めてパルテノン神殿を前にしたときは、迫力に圧倒されはしたものの、正直その偉大さがよくわかりませんでした。それから後、別の機会に二回、三回と見ているうちに、少しずつその凄さがわかるようになりました
 勉強して、建築に対する理解が深まるにつれ、その魅力を肌で感じることができるようになったのです。p 41

 その本はただ眺めるだけでなく、紹介されている図面やドローイングを真似しながら、何度も繰り返して書き写しをしました。p 59 

 ル・コルビュジエはスイスの山間の町、ラ・ショー=ド=フォンというところに生まれ、それからパリに出ていきます。専門の教育も受けずに仕事を始めた独学の建築家で、自分で道を切り拓こうとたくさんのプロジェクトを提案しますが、これがなかなからまくいかず、連戦運敗だったようです。
 しかし、彼はうまくいかなくてもあきらめずにまた挑戦をする。そんな生き方に、私は憧れ以上の思いを抱き、少なからず影響を受けています。何しろ私も連戦連敗ですから。p60


 以前、事務所で犬を飼ったことがありまして、その犬に「コルビュジェ」と名付けていました。(中略)、自分たちもコルビュジエのように、「思うように仕事がうまくいかなくても、へこたれることなくやり続けよう」という思いを託したんです。p 61


 早いうちに子供たちに「アジアはひとつ、地球はひとつ」という意識を持たせなければなりません。親がよく言って聞かせたり、体験させないといけないと思いますね。p 74


 9・11の問題は、 経済大国アメリカが世界中に「経済至上主義」を広げたことが原因のひと つですので、9・11の後に、また経済至上主義的な建物を立てるより、古墳状の広がりのある広場を作るのはどうだろうか、全面芝生にし、ここで悲惨な出来事が起こったけれども、これからアメリカは世界中の人たちと地球上で共に生きる、という表現をしませんかと提案しました

 残念ながら相手にもされませんでした。「経済的にメリットがない」とも言われました。が、それが悲劇の原因になっている一面もあるわけです。p 81〜82


『木を植えた男』に描かれた「農夫のように、粘り強く、無私な行為を黙々と続けるなど、なかなかできることではありません。しかし、人々が小さな力を出し合って協力をすれば、必ずこの世の中を変えていくことができるはずではないかと思うんです」(p85)。


 長寿の源は何かと自分なりに分析すると、好奇心ではないかと思います。その好奇心の裏側にあるのは、自然なんです。美しい自然。p 91


 人間は会話の中でこそ、生きているということを実感できるはずなのですが、今はその機会すら失われています。p 98


「読み」というのは、読むことによって哲学を考えるということ。自分の生き方を考える。「書く」というのは、書くことによって自分の考え方を表現するということ。「算盤」というのは、単なる数勘定ではなく人生を計画する、ということです。

 自分の人生を計画するのに、過去をどう考え、未来をどう考えるか。そのためには、読み書き算盤ができないといけないと思うんです。 

(中略)

 本当の読み書き算盤とは、 自分の思考と表現と判断力によって自分の世界を作っていくということです。p103〜105


0 件のコメント:

コメントを投稿