2022年2月7日月曜日

億の幸福の相犯さない共存

 最近、三人の思想家に注目し、追いかけている。見田宗介さん(『現代社会はどこに向かうか』『社会学入門:人間と社会の未来』など)、柄谷行人さん(『憲法の無意識』『戦後思想の到達点』など)、和辻哲郎さん(『甦る和辻哲郎 人文科学の再生に向けて』『和辻哲郎 異文化共生の形』など)の三人だが、三人には、共通する未来社会論のようなものがあるのではないか、と考えるようになったからである。
 今回は、見田宗介さんの未来社会論を『現代社会はどこに向かうか』から要約してみる。

 新しい世界を創造する時のわれわれの実践的な公準は、第一に肯定的であるということ。第二に多様であること。第三に現在を楽しむことである。
 「第一の肯定的であるということは、現在あるものを肯定する、ということではない。現在無いもの、真に肯定的なものを、ラディカルに、積極的に、つくりだしてゆく、とその中で桎梏となるもの、妨害となるもの、制約となるものがあれば、権力であれシステムであれ、この真に肯定的なものをこそ力とし、根拠地として、打破し、のりこえてゆくということである」(p153)。
 第二の多様性について言えば、宮沢賢治の詩稿の断片に、このような一節がある。
 ああたれか来てわたくしに言へ/「億の巨匠が並んでうまれ、/しかも互に相犯さない、/明るい世界はかならず来る」
 と。
 われわれはここで巨匠の項のコンセプトに、幸福をおきかえてみることができる。
   億の幸福が並んで生まれ、/しかも互いに相犯さない、/明るい世界はかならず来る。
 と
 明るい世界の核心は、億の幸福の相犯さない共存ということにある。
 第三の現在を楽しむことは、「新しい世界をつくるための活動は、それ自体心が躍るものなければならない。楽しいものでなければならない。その活動を生きたということが、それ自体として充実した、悔いのないものでなければならない。解放のための実践自体が解放でなければならない」(p 155)。
 私は、第三が特に重要で、見田さんの独創ではないかと考えている。ややもすると、明るい未来のためには、多少苦しいこと嫌なことがあっても仕方がない。「苦ありて楽あり」なのだ、といった考えがほとんどに思えるからだ。「解放のための実践自体が解放でなければならない」という思想の源流があったら教えて欲しいものである。

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