2021年9月9日木曜日

戦争の記憶が遠ざかるとき・・・

  石垣りんさんの名前だけは知っていたが、詩人でもあったことまで知らなかった。茨木のり子自分の感受性くらい・別冊太陽』(平凡社、2019年)に、詩人の茨木のり子さんが「最も高く評価した女性詩人が石垣りんだった」と書かれていた。続いて、

「美しい言葉とは」というエッセイで、
第二次大戦をテーマとした石垣の「崖」を上げ、
「衝撃を受けつつ、何度もくりかえし読んだ」と書いた。
 とあった。そこで、「崖」を探して読んでみた。「弔詞」という石垣りんの詩もあって、最後の二連「戦争の記憶が遠ざかるとき、/戦争がまた/私たちに近づく。/そうでなければ良い。」「八月十五日。/眠っているのは私たち。/苦しみにさめているのは/あなたたち。/行かないで下さい 皆さん、どうかここに居て下さい。」(「弔詞」より)が胸に刺さった。「戦争の記憶が遠ざかるとき、戦争がまた私たちに近づく」というのは真実かも知れない。だからこそ、繰返し、戦争の記憶に思いを馳せる必要がある。

 「崖」    石垣 りん

戦争の終り、
サイパン島の崖の上から 
次々に身を投げた女たち。
 
美徳やら義理やら体裁やら
何やら。
火だの男だのに追いつめられて。

とばなければならないからとびこんだ。
ゆき場のないゆき場所。
(崖はいつも女をまっさかさまにする)

それがねえ
まだ一人も海にとどかないのだ。
十五年もたつというのに
どうしたんだろう。
あの、
女。  

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