2021年9月25日土曜日

群れ飛ぶ日の丸を見あげては

 今日は、山之口貘の詩集から「紙の上」という「戰爭が起きあがると/飛び立つ鳥のやうに/日の丸の翅(つばさ)をおしひろげそこからみんな飛び立つた」で始まる不思議な詩を紹介する。ここでいう「日の丸の翅をおしひろげ」から、どれだけに人が「日の丸の寄せ書き」を想像し得るのだろう。
 この詩のミソとも言える言葉は何だろうか。それは「どもる思想」である。そう私には思えた。「ただ」の繰り返しが、彼の中でくすぶっている「どもる思想」というものを端的に表現しているのではないだろうか。私には、「飛び立つ兵器の群をうちながめ/群れ飛ぶ日の丸を見あげて」も、何もできない彼の心の内が伝わってくる。


紙の上

戰爭が起きあがると
飛び立つ鳥のやうに
日の丸の翅をおしひろげそこからみんな飛び立つた

一匹の詩人が紙の上にゐて
群れ飛ぶ日の丸を見あげては
だだ
だだ と叫んでゐる
発育不全の短い足 へこんだ腹 持ち上らないでつかい頭
さえづる兵器の群をながめては
だだ
だだ と叫んでゐる

だだ
だだ と叫んでゐるが
いつになつたら「戰爭」が言へるのか
不便な肉體
どもる思想
まるで沙漠にゐるやうだ
インクに渇いたのどをかきむしり熱砂の上にすねかへる
その一匹の大きな舌足らず
だだ
だだ と叫んでは
飛び立つ兵器の群をうちながめ
群れ飛ぶ日の丸を見あげては
だだ
だだ と叫んでゐる

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