2020年4月17日金曜日

魂を表現した絵

『怖い絵のひみつ』(中野京子著、KADOKAWA、p67)で、ウィリアム・ホガースが描いた「ビール街と〈ジン横丁〉」の解説を読んだ。絵に込められた画家の心を読み取る、という鑑賞もあることを知った。
 ワイエスの「松ぽっくり男爵」も、福島県立美術館で何度も目にしていながら、あまり気にとめることがなかった。しかし、ドイツ軍の軍服を着てヘルメットをかぶった軍人の肖像画「ドイツ人(THE GERMAN)」を知って、「松ぽっくり男爵」のヘルメットが肖像画に描かれたヘルメットであることを知った。そこで初めて、「松ぽっくり男爵」の絵が素晴らしさがわかった。
 解説には「透徹した写実描写を駆使しながら、日常を超えた眼に見えない魂を静かな感動をもって表現している」とあった。なるほど。「ビール街と〈ジン横丁〉」も、考えてみたら、娼婦の魂を表現している。

 こうしたスラム街では、粗悪な安酒ジンを売りつけるジン・ショップが建ち並んでいました。
 本作には中央でジンを飲んで酩酊し、階段にだらしなく座るボサポサ髪の娼婦が描かれています。なぜ娼婦とわかるのかというと、 彼女の足に梅毒による腫物が浮かんでいるからです。
 彼女は胸をはだけて授乳していましたが、嗅ぎ煙草をつまもうとそちらに気をとられた隙に赤ん坊は真っ逆さまに階段の下へ落ちてゆく。この高さでは、赤ん坊が助かることはないでしょう。
 またアルコールや梅毒に触まれた女性の命も長くはない はずです。これこそがロンドンの娼婦の現実。「道をふみはずした女」の行く末が、100年も前からここにあったのです。
ビール街と〈ジン横丁〉
松ぽっくり男爵

「ドイツ人(THE GERMAN)」(1975年)
 ドイツ軍の軍服を着用したカール・カーナーの肖像です。この絵の中でかぶっているドイツ軍のヘルメットは、バロン(男爵)という愛称で呼ばれていました。「松ぽっくり男爵』に描かれているのもこのヘルメットです。(福島県立美術館の解説より)

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