2024年1月25日木曜日

負のエントロピーを持つ生命系

 久しぶりに感動的な読書をすることができました。実は、世界をエントロピー概念で把握すればわかりやすいのではないか、と考えていました。しかし、エントロピー関連の本を読んでも、いまいちピンとくるものがなく、”棚上げ状態”でした。それが、分厚い本『情報の歴史21 象形文字から仮想現実まで』(松岡正剛監修、編集工学研究所、2021年)の序文みたいな「象形文字から人工知能へ」という文章の中に求めていた考えを見つけることができたからです。
 その部分を引用すると次の通りです。
「生物は、まずは負のエントロピーを食べつづける“情報列車”になった」のですが、人類社会がここまで発展して来れたのも、負のエントロピーを食べつづけてきたからと言えそうです。
 ほんとうのところをうちあければ、情報を主人公とした全歴史はもともと宇宙史・生物史・人間史・社会史のいずれをも貫通してきたものなのだ。おそらく宇宙史のどこかから「時間の矢」や「エントロピーの矢」とともに「情報の矢」かあらわれ,この三つの矢があやしけな攻防をくりかえしているうちに、エントロピーの猛威を脱した情報が(いわば原情報流ともいうべきか) 、宇宙空間を飛行しながら適当な遊星のひとつにたどりついたという顛末なのである。
 もうすこし穏やかにいうのなら、生命の発生が情報史の発端である。宇宙から飛来してきたであろう“情報の種子"を、たまさか選んだ地球条件の中でながい時間をかけて保存し維持することが、生命系の役割であったからだった。宇宙的な時空ではエントロピーはだんたん増大し無死状態に向かっていく。それが宇宙の熱源から遠く離れた地球では生命はエントロピーにさからって成長することができた。情報をなんとか高分子状態にして運ぶこと、生命系の役割とはそのことにあるからだ。こうして生物は、まずは負のエントロピーを食べつづける“情報列車”になったのである。しかし.それたけではなかった。われわれは世代交代だけを目標とする利己的な遺伝子のための“借家"だけにはおわらなかったのである。
 生物史がヒトサルからヒトをめさすまでに、生命系は二つの重要な仕事をおえていた。ひとつは、自分自身を複製するためにD N Aなどをつかって遺伝情報を操作することである。これは利己的な遭伝子のためのすこぶる有効な子守歌になった。しかしもうひとつ仕事があった。外界からの情報を選択し、生体に有利な情報処理システムを開発することだった。この後害のシステムが、まず原始的な神経系になり、しだいに中継部門と端末ネットワークを形成して、やがては巨大な脳をつくるようになっていった。私は、この後者のシステムを「自己編集化のシステム」とよんでいる。(松岡正剛著「象形文字から人工知能へ」『情報の歴史21 象形文字から仮想現実まで』、松岡正剛監修、編集工学研究所、2021年、下線は引用者)

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