民主主義について、正しく理解されていない。そして、上辺だけの民主主義論が横行しているように見える。なぜなら、民主主義についての”専門家”と思われている学者宇野重規の言説に違和感があるからだ。彼は東京大学社会科学研究所教授で専門は政治哲学・政治思想史、『民主主義とは何か』や『民主主義を信じる』などの著書もある。しかし、朝日新聞のインタビューに答えて「たしかに、東アジアや世界で高まる安全保障上の緊張に対応するうえで軍事力は重要なファクターですが、今後の世界や地域の平和と安定を考えると、経済的関係や外交による外国との信頼関係の構築、文化的なある種の相互浸透などと複合的に考えていくべきだと思います」(朝日新聞、2023年2月21日)と述べ、軍事力を、安全保障上の「重要なファクター」と言って肯定している。この態度は、明らかに民主主義に反する。
ジーン・シャープは『独裁体制から民主主義へ』の中で「民主主義的な防衛政策」という項目を設け、「新たな自由国家は、抵抗の力を市民の手に委ねることによって、軍事力を構築する必要性を回避することができる。軍事力はそれ自体が、民主主義を脅かしたり、本来ならば他の目的に向けられるべき多大な経済的資源を奪ったりするものだ」(『独裁体制から民主主義へ』、ちくま学芸文庫、p132)と述べ、民主主義にとって軍事力はなじまない、従って「民主主義に軍事力は相容れない」と解説しているのだ。この立場こそ、真の民主主義の姿であろう。
宇野重規の著書で『民主主義を信じる』などと言っているが、軍事力を肯定した「民主主義」では困る。本の中では、真の民主主義の姿を描いているかもしれないので、きちんと読み、宇野重規の民主主義論というものを明らかにしてみたい。それにしても、防衛費倍増に向かおうとしている今こそ、多大な防衛費の負担は「本来ならば他の目的に向けられるべき多大な経済的資源」を奪ってしまうというジーン・シャープの声に耳を傾けるべきである。
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