生命科学者の中村桂子さんが、平安時代後期に書かれた『堤中納言物語』の中の「虫めづる姫君」から、と言って「あらゆる事象を究明し、その成長過程を見極めることこそ意味がある」(『いつもそばに本が』、田辺聖子ほか著、ワイズ出版、2012年、p402)という言葉を「これは生物学そのものだ」と紹介していた。このところを読んで、『エマニュエル・トッドの思考地図』(エマニュエル・トッド著、筑摩書房)で読んだ「歴史に語らせる」(p81)「すべては歴史である」(p84)という言葉を思い出した。そして、「あらゆる事象の究明には、その成長過程(歴史)を見極めることこそ意味があって重要である」と自分なりに理解することができた。
今、防衛予算を増やそうとしている。この事象を究明しようとすれば、歴史を見極めることが重要で、歴史に語らせることが重要になる。ちょうど、永井荷風の『摘録断腸亭日乗・下』に「現在の事態は日本を破滅に導いた軍部指導者の採った理論が誤謬であって、尾崎氏の如き人々が正当であった事を立派に証明している。言論の自由と自由主義政府とを再び確立することが日本の将来を保証する唯一の道である」(『摘録断腸亭日乗・下』、永井荷風著、ワイド版岩波文庫、p271~172)と書かれているのを見つけた。これこそ「歴史に語らせる」ではないだろうか。
同書で尾崎行雄氏が「軍国主義の旧弊を固守」(上同、p271)する軍部を批判したことも書かれている。現政府が「防衛費を使って」これまでやっってきたこと、これからやろうとしていることは、尾崎行雄氏のいうところの「軍国主義の旧弊」と同じである。国土を廃墟にした軍国主義を否定したはずなのに、再び、堂々と蘇っているにも関わらず、気が付かない、あるいは気が付かないふりをしているとしか思えない。軍国主義の台頭を許してはならないのだ。
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