松ケ崎の対空陣地の巡察に行った。高射砲がないので改造三八式野砲(明治三十八年製)という約四十年前の大砲でB29を撃墜しようという見せかけ配備である。国民は精強日本車を信じてひたすら神風の到来を待っていたのである。p554やがて、その大砲までなくなったのだろうか。次のように続く。
砲無くて何の幹部ぞ『ばばカード』引かるる日まで穴掘りて待つ
大砲の無い野砲隊に砲兵の将校はいらない。じやまになるだけだ。『ばばカード』となった身はいずれ他に放り出される運命にある。藷作りの隊長か、退避壕造りの指揮官かを選ばされる。私は後者を希望した。藷作りよりも土工作業がまだしも軍人らしいと思ったからである。昭和十九年も残り少ない。
国民総武装閣議決定
竹槍訓練開始
レイテ沖海戦
神風特攻隊
東京初空襲
と続く。
大砲の充足さるる見込みなし
夢の終止符 ト・ト・ト・ツー・ト
ある日部隊長に呼ばれた。
「当分大砲は充足されない・若い君達は新しい部隊へ行って頑張ってもらいたい・北條見習士官は師団通信隊へ行け……」
いつの日か大砲が配備されるものと信じて砲兵将校の夢を持ちつづけていたが、今日で総ては終った。p554~556
このような記録を読むと、「勝とう」と言った目的のようなものは何も感じられない。そこにあったものは、何なのか、わからなくなってきた。
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