2021年3月12日金曜日

現代版「見ざる、言わざる、聞かざる」

「アメリ力からの「独立」を考える、この3冊」という書評を読んだ。「日本とアメリカの関係は、敗戦直後の占領時代から本質的に変わっていない」ということに違和感を持ち、アメリカからの独立、米軍の撤去を心から願っている人は、どのくらいいるのだろうか。文字通り「他国の軍隊が駐留し続ける。この異常な事態を常態化するためにつくられたのが日米安保条約であり日米地位協定だった」というならば、その戦略は、大成功と言えるだろう。新聞論調を見る限り、他国の軍隊が駐留し続けているこの異常な常態に対し、異常という認識はないからである。
 しかし、ちょっと考えれば、「他国の軍隊が駐留し続け、日本国憲法の上に日米地位協定があり、国会の上に日米合同委員会がある」状態が異常であることは、すぐにわかるはずだ。問題なのは、わかっても、「見ざる、言わざる、聞かざる」なのではないか、ということだ。そんな人々の心根は、徳川時代からなんら進歩していないことになる。情けないことである。
 日本とアメリカの関係は、敗戦直後の占領時代から本質的に変わっていないのではないか。そう思う理由のひとつは日米地位協定の存在だ。
 ごく大雑把にいうと、米軍は日本国内の基地を自由に使えるし、米兵や米軍関係者は日本でどんな悪いことをしても日本の法律で裁かれないという、不平等で理不尽な協定である。
 しかも具体的な運用は協定そのものではなく、日米高官による密室会議「日米合同委員会」で秘密裏に進められることが多い。翁長雄志沖縄県知事は亡くなる前「日本国憲法の上に日米地位協定があり、国会の上に日米合同委員会がある」という言葉を遺した。
(中略)
 戦争が終わっても他国の軍隊が駐留し続ける。この異常な事態を常態化するためにつくられたのが日米安保条約であり日米地位協定だった。だがその成立過程は意外と複雑だ。アメリカ政府が一方的に日本に押しつけたわけでもないのだ。当初は日本政府も国内世論を背景にそれなりに交渉した。
 ところがその後、沖縄の復帰などを経て、日本政府、とりわけ外務省の態度が変質していく。昨今流行のいやな言葉でいうと”忖度”である。外務官僚たちは米国の顔色をうかがい、日本国民の生命・財産より米軍の利便性を優先していく。それも密約を交わして、国民には内緒で。
 日米地位協定というと、沖縄のことが真っ先に思い浮かぶ。実際、米軍機の墜落や米兵の凶悪犯罪などで、沖縄の人はさんざん苦汁を飲まされてきた。だが地位協定は沖縄外にも及ぶ。もちろん東京でも。
(中略)
『主権なき平和国家』の最も重要な点。日米地位協定によって理不尽な目に遭っている日本は、いまや地位協定の加害国になりつつあるという事実だ。自衛隊の海外派遣にともない、日本政府は派遣先国と地位協定(交換公文)を結んでいるが、これが日米地位協定と同じく不平等なものなのだ。この現実を直視しよう。(永江朗著、『通販生活』、2021年春号、p164、強調は引用者)

1、『日米地位協定在日米軍と「同盟」の70年』、山本章子著、中公新書、本体840円十税
2、『横田空域日米合同委員会でつくられた空の壁』、吉田敏浩著、角川新書、本体840円十税
3、『主権なき平和国家・地位協定の国際比較からみる日本の姿』、伊勢崎賢治、布施祐仁著、集英社クリエイティブ、本体1500円十税

 

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