2021年3月29日月曜日

殺さずば殺さるるもの戦争とは

 「天皇から一番遠くに住んだ人びと」で『一銭五厘たちの横丁』を紹介したが、同類の本『一つ星:一銭五厘の男たちの話』(北条喜八著、文芸社、2003年)を読んだ。そして、沖縄戦で日本軍によって住民が殺されたように、多くの日本兵が上官の命令によって無駄な死に方をしていたことを知った。「幾万の草むす屍は/一将の星数増やす/こやしにてあり」(p548)という具合だ。次の「出世欲に取りつかれた軍司令官達の狂気」は、なんとも情けない話だが、これが戦争の実態なのであろう。

 戦争を始めたのは陸軍だという。この当時の陸軍は、五・一五事件、二・二六事件と相つぐ軍部クーデターのうねりの中に将軍達が自己の勢力拡張をねらって、文字通りの百鬼夜行図が繰り広げられていた。しかし、マスコミの力は弱くこんな内情はほとんど国民には知らされていなかったのである。
 野砲兵第五十三連隊の悲しい終焉も、出世欲に取りつかれた軍司令官達の狂気の結末に外ならない。
 補給を無視したインパール作戦がそれである。成吉思汗の戦法を真似て雨期のアラカン山系に挑み、戦局は全く絶望の局面をむかえているにもかかわらず、面子にこだわって成算のない攻撃を繰り返した。大本営、南方総軍、ビルマ方面軍、第十五軍、いずれも金色燦然たる襟章の将軍達の立身出世欲が数万の兵士の生命を奪った。しかも、この将軍達は、インパール作戦の失敗をよそに、それぞれ栄転した。戦後においても彼等が責任を取って自決したという話を聞かない。p545~546

 こんな悲しい歌もあった。このような歌を読むと、改めて「死に物狂いで戦争を止めなくちゃ」と思う。

再びは帰ることなき営門を/軍靴のひびき遠ざかりゆく

殺さずば殺さるるもの戦争(いくさ)とは/言葉なきもの悲しきものぞ

防人の群れは声なく闇に消ゆ/軍靴の響…… ざっ ざっ ざっ ざっ……(p542)

0 件のコメント:

コメントを投稿