2024年11月11日月曜日

死の準備と練習をする

 ポジティブ心理学というのを知りました。「自分自身が持っている心の強みを発見して、前向きに幸福と人生の幸福を目指すのが、ポジティブ心理学」で、「一時的でもポジティブな感情を重ねていくことで、死の恐れを乗り越え、人生を豊かにすることができる」(注1)というのです。心強い限りです。それでは、モンテーニュは『エセー』の中で、「哲学をきわめるとは死ぬことを学ぶこと」と書いていますが、そこまでしなくてもいいではないか、と思ってしまいかした。
 そこで、モンテーニュが言いたいことはどんなことだろうと、読み直して、なるほどと、その内容に感心してしまいました。ポジティブ心理学も包含されて見事にまとめられていたからです。それは次の通りです。
「キケロは、哲学をきわめるとは死の準備をすることにほかならない、と言った。これはつまり、研究や瞑想が、ある意味で、われわれの精神をわれわれの外に引き出し、肉体と離して働かせるからで、いわば、死の練習、模倣のようなものだからである。あるいは、世のあらゆる知恵と理論が、結局は、われわれに死を少しも恐れないように教えるという一点に帰着するから」(注2)です。
 続いて、「また、その努力は聖書にもあるように、結局、われわれをよく、しかも楽しく、暮らさせることを目指しているにちがいない。世のあらゆる意見は、たとえ方法はまちまちでも、快楽こそわれの目的であるという、この一点に帰着する。そうでなければ、そんな意見などははじめから追い払われるであろう。実際、われわれの苦労や不幸を目的とする人の言説などを誰が聞くだろうか」(注2)とまで言っています。


(注1)島井哲志著「いくつになっても死ぬのが怖い。どうしたらいいか」『プレジデント』、2018年3月5日、p105
(注2)『世界古典文学全集 第37巻 (モンテーニュ1)』、筑摩書房、1984年、p55

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